イワナの世界へようこそ Vol.1はこちらから
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イワナの世界へようこそ Vol.1でイワナの特徴が谷ごとに違うことについて紹介した。
今回は真っ赤なイワナと黄金イワナを求めた山行記をお届けしたい。
こんな鮮やかなイワナが日本のどこかに暮らしている。
心底釣ってみたいと思った。とにかく色鮮やかなイワナ達
とある大きな川の支流のどこかに、体色が真っ赤なイワナが棲んでいる。
近隣の沢のイワナはこの写真のように金色だが、その支流のある区間のイワナは何故か真っ赤だという。
『何この沢!メチャクチャ行ってみたい!』思わずiPhoneに向かって話しかけてしまった。
怪魚ハンターとは、いつだって自分の好奇心を擽る目的地や対象魚を探している生き物だ。
1日では釣行不可能な場所だと思われた
平成生まれの怪魚ハンター(画像右)は文章や画像から様々な情報を引き出していくのが得意だ。
今回も、どの山のイワナなのか、行くべき沢筋も含めて確信こそないものの見当がついた。
だが一つ、問題が…。車が通れる道から目的の沢が遠いのだ。まだまだ山歩きに自信を持てない僕にとって、初めての山で1人幾泊もする勇気はなかった。
そこで、大先輩でもある昭和生まれの怪魚ハンター?(画像左)である片山氏を『赤岩魚を釣りに行きませんか?』そうやって誘ってみた。するとすぐに返事があった。
『○○川の××沢の支流だね!行こう!』
ハッキリ言って唖然とした。引き出しの多さと深さが平成とはまるで違う。昭和の怪魚ハンターは凄いのだ。
昭和と平成の情報を突き合わせ、やっぱり沢通しで赤岩魚の区間を目指すと意外と遠いということを再確認した。
そこで、反対側から一度山に登ってしまい稜線を辿りながらココぞという場所から降りてみる作戦を考えた。山の中を歩くより稜線を歩く方が効率も良い。
これなら1日掛からずに目的の沢に降り立てそうだ。岩魚探しは山歩きのルートを計画するのも醍醐味の1つである。
竹藪を泳ぐこと幾時間
3泊4日分の食料をザックに詰め込み、意気揚々と歩き出した。稜線歩きは快適な登山者気分だ。
ところが沢に降りるならこの辺りだろうと目星を付けた場所は、想像以上に広大な笹薮地獄。とは言え、怯んでいる暇は無い。高いテンションに任せて突撃だ!藪漕ぎとは最初の5分は楽しいものである。普通の生活では感じることのない植物の世界を突き進んでいく感覚が爽快だ。とは言え、10分もすれば帰りたい。そう思うものだが…。
この場所は些か笹薮の密集度が高かった。どのくらいって、足が地面に付かないのだ。まるで笹薮の海を泳いでいるかのような不思議な浮遊感を味わいながら両手も使って標高を下げていく。
途中、歩きやすい枯れた沢を見つけて降るペースを上げていくと、どうもスズメバチの通路だったようで笹の海へ撤退を余儀なくされた。再び藪を漕ぐこと幾時間。やっと思いで最初の一滴となる沢筋までたどり着いた。
滝の上から覗き込むと真っ赤なイワナが悠々と泳いでいた
帰り道に迷わないように要所にピンクテープを巻いておく。帰りはこのマークを回収しながら帰れば安心だ。
魚の居ない源流部をドンドン下っていくと滝が現れた。試しに上から水面を覗き込むと、いるぞ!いるぞ!真っ赤なイワナだ!
生き物探しをしている人にとって、目標としていた生き物の生息場所を探し当てたり、その場にたどり着いたこの瞬間こそが快感なのだ。
あとは、その場にあった手段で何とか捕まえるだけ。すぐにザックをおろして釣り竿を用意し
目標としていた真っ赤なイワナを釣り上げた
滅多に人が訪れない沢に棲むイワナは驚くほど警戒心が薄い。この沢も例外なく、一投目でルアーに違和感すら持たずに思いっきり絡みついてきた。
滝の上から慎重に掛かったイワナを抜き上げ、あらためイワナを覗き込むとその赤さに2人で驚いた。赤と言うより、柿色という表現の方がしっくりくるかもしれない。
その後も釣れ続けるイワナは全て真っ赤!片山氏は尺を優に超える太い大イワナまで釣り上げた。セミやトンボを模した表層系のルアーでも次々とイワナが食らいついてくるような状況に僕らにとって最高の沢に降り立てたことを2人で確信した。
河原を整地しテントを張る。そして旨い飯を作る
山奥で泊まることもイワナ釣りの醍醐味の1つだ。テントを張る場所を自分たちで探し、凸凹な河原を平に整地していく。
テントを張ったら次は薪拾いと火起こし、そして釣ったイワナの下処理だ。2人で役割分担して食事の準備をドンドン進めていく。
焚火を囲みながら、旨い飯を沢山食べて疲れを翌日に残さぬようにしっかり睡眠を取った。
金色のイワナを求めて沢を降る
初日にして、真っ赤なイワナを釣り上げた僕ら2人は、贅沢ながらこの水系で良くみられるという金色のイワナを探すべく2日目は沢を降ってみることにした。イワナの力では登ることのできない滝をかわしながら、一日かけて釣り上がる頃にテントに到着できるようにグングン標高を下げてから実釣開始。
いかにも尺イワナが出そうな滝つぼへルアーを投げ込むと、金色に輝くイワナが一直線に飛びかかってきた。
黄金に輝くイワナに感動
昨日釣ったイワナ達と姿かたちはよく似ているイワナだが、体色だけ全く異質な黄金イワナだ。
同じ沢でも区間が違うと色が違う。イワナの世界は実に奥深い。そう改めて実感させられる瞬間であった。
何故、イワナの色が変わるのか僕たちは専門家でもなんでもないので想像しかできないのだが、この沢の場合は水質や餌、川底の色が原因なんじゃないかな。そう素人なりに感じさせられた。
3日目。二度と体験したくない笹薮を登り返す
楽しい時間はあっという間だ。気づけば3日目の朝。予定では明日までの計画だったが、赤も金も釣れて釣果的に大満足だったことに加えて明日から天気が崩れる予報だったので、1日早く下山することになった。
手際よくテントをザックに仕舞い、ピンクテープを回収しながら初日と同じルートで沢を詰め上げていく。
初日に大興奮した魚止めの滝で一旦ザックを下ろし、赤岩魚の見納めをしようと竿を振った。
状態の良い沢の岩魚は2日も経てば、釣られたことを忘れて同じ魚が果敢にルアーや餌に食らいついてくる。
片山氏が初日に釣った大イワナを再び釣り上げたところで今回の釣行は納竿となった。
帰り道、『もう二度とこんな藪漕ぎはしない!』って叫びながら全然前に進まない笹薮を死に物狂いで登り返した2人であったが、帰りの車内で『次はどこの山へどんなイワナを釣りに行く?!次はハイマツ地獄かな?!』なんて話しながら帰路についた。やはり、イワナフリークは懲りることを知らないようだ。