怪魚という単語に定義などないが、敢えて一言で表現するなら…
『生息する場所が限定され、特徴豊かな魚』そんなところだろう。
今回の記事では、日本三大怪魚と称される3種類の魚を簡単にご紹介したい。
怪魚の世界観
牙があったり、目が光ったり、巨大だったり…。怪魚と呼ばれる魚には、人々の注目を集めるような外見的特徴がある。
一方で、怪魚は釣り味が面白くなかったり、滅多に釣れないといった理由から、一般的な釣り人からは不人気な魚が多いのも事実だ。
もし、釣り師の中に“釣りという行為”が好きというベクトルと“生き物が好き”というベクトルがあるとすれば、怪魚にハマる人は後者であることが多い。
怪魚を求める人にとって“魚釣り”とは、あくまでも魚と出会うための手段の1つにすぎない。相手によっては、網で掬ったり、漁業者と一緒に漁をしたり、捕まえてはいけない生き物は潜って一緒に泳ぐことだってある。
言い換えれば、怪魚釣りは生き物採集の延長線上にあるといっても良いかもしれない。
自身のベクトルの分岐点を探るとするならば、魚釣りをしていて、ウグイやボラといった外道を楽しんで釣れるか、煩わしいと感じるか思い返してみると良いだろう。
前者の場合は怪魚釣りにハマる素質があるかもしれない。
日本三大怪魚は怪魚界への入り口
そんな怪魚の世界への登竜門とも言える魚が日本三大怪魚だろう。
四国・九州に生息するアカメ、琵琶湖水系に生息するビワコオオナマズ、北海道に生息するイトウ。これらが日本三大怪魚と称され、イトウとアカメについては生き物好きだけでなく、釣り人からも人気が高い好ターゲットだ。
日本三大怪魚の中で一番釣るのが簡単な魚は?
仕事柄、『日本三大怪魚の中で一番簡単に釣れる魚は何ですか?』と聞かれることが多い。
僕はいつも『圧倒的にイトウですね』と答える。あくまでも3種の中でだが、イトウが一番簡単かつ高確率で出会うことができる。
イトウの生態と生息域をしっかり勉強した上で北海道の地を訪ねれば、イトウは素直に答えてくれる。
イトウについて
細長い円錐形の魚体が特徴のイトウは、サケやマスの仲間であり、最大で120cm 20kg前後まで成長する魚だ。
現在、日本では北海道にのみ生息し、猿払川や朱鞠内湖といったフィールドがイトウ釣りの聖地として名を馳せる。
貪欲かつ果敢に餌を追いかける魚のため、ルアー、フライ、餌、どれでも釣ることのできる魚だが、釣り味という観点からはルアーやフライを使った釣りが面白いとされる。因みに、餌釣りの釣果はあまり見聞きしない。
海に降る魚としても知られるイトウは、サーフから渓流域まで様々な環境で釣ることができ、各々が好きなシチュエーションでイトウ釣りを楽しむことができる。
日本三大怪魚の中で一番釣るのが難しい魚は?
イトウの対局にいるのがビワコオオナマズだ。特に、琵琶湖本湖に生息するビワコオオナマズを狙って釣るとなると、数日では足りず、数週間という釣行時間を覚悟する必要がある。
一方で、河川に生息するビワコオオナマズは、広大な本湖と比べると釣りをする面積が限られるため、いくらか簡単に出会うことができる。
ビワコオオナマズについて
ビワコオオナマズは、琵琶湖・淀川水系にのみ生息する固有種で、最大130cm 20kg前後まで成長する。
生きた魚を好んで捕食するフィッシュイーターであるが、ルアーの追いは決して良くなく、大雨の後など天候や水中の環境に変化が起きた時に釣れることが多い魚だ。
イトウのように常に活性の高い魚ではないが、ひとたび捕食行動のスイッチが入ると40cmもあるニゴイや70cmもあるウナギに食らいつく程、凶暴な魚だ。
日本三大怪魚の中で一番怪魚らしい魚は?
真っ赤な瞳、分厚くて強固なウロコ、バケツのように大きな口、扇のような尾ビレ、とにかく特徴豊かなアカメが一番怪魚らしい魚だ。
“アカメは人を惹き付ける魚“と言われることがあるが、それを裏付けるようにアカメを釣るために移住する人も珍しくない。
因みに、アカメと出会うことは然程難しくない。高知県をはじめとするアカメの生息域では、漁港や河川でアカメが泳ぐ姿を観察することは比較的簡単だ。
画像は干潮間際に姿を現した、120cm級の大アカメ。水深は僅か1.5mほど。時にアカメは大胆に浅瀬でボラなどのベイトを捕食する。
アカメについて
バラマンディやナイルパーチの仲間であるアカメは日本の固有種で、最大130cm40kg前後まで成長する。
アカメ釣りはルアーと餌釣りが主流であり、ルアー釣りの方が手軽で様々な大きさのアカメを釣ることができる。
一方でアカメの餌釣りは一発大物狙いの要素が大きく、1mを超えるような大アカメを40cm以上あるボラやチヌを泳がせて釣る。
餌とルアーどちらがアカメを簡単に釣れるか?と聞かれると、シーバスやバスフィッシングを普段からやり込んでいるアングラーならルアーの方が手っ取り早く釣ることができると僕はいつも答えている。
ルアー釣りの経験が浅い人は、餌釣りの方が苦労なくアカメを釣ることができるだろう。
アカメの餌釣りは、状態の良い活き餌をいかにして確保するか。これに尽きる部分があり、40cmのボラを釣るのに1日掛かり、アカメは1時間で釣れてしまった。なんてこともある。
日本に棲む怪魚は他にもいる
日本に生息する怪魚は、外来種も含めてまだまだ他にもいる。
例えば、外来魚として利根川水系に定着しているアオウオは、アベレージサイズで130~140cm、160cmを超える個体も珍しくない。
他にもソウギョやハクレンといった100cmを超えてくる大型の外来魚が利根川に生息している。
形に特徴がある魚としては、セッパリが特徴のカラフトマスやヒメマスも怪魚好きに人気な魚と言えるだろう。
地域限定のレア魚としては、ウケクチウグイやタニガワナマズも怪魚マニアの心を擽る魚だ。
アカメ、イトウ、ビワコオオナマズを釣り上げてしまうと、不思議と違う魚が釣りたくなる。コレが怪魚好き共通の欲望だ。
水辺の魚達を俯瞰してみると色んな魚が泳いでいて、一生では釣り切れないことにフッとした瞬間に気づく。1つの魚種を突き詰める人生も良いが、色んな魚に出会いに行く人生も悪くない。