本物のシシャモを釣り上げるために北海道へ

“シシャモ”ってどんな魚だろう

シシャモという魚を知らない人なんて、魚が嫌いな極僅かな人だと思っていた。言わずもがなシシャモは、サバやアジと肩を並べる、スーパーマーケットのド定番商品だからだ。
ストロー状の串にエラを通され、干物になった状態で売られている13cm程度の魚だが、生前はどんな姿だったのだろうか…。ある日、突然気になった。

本シシャモは幻の食材になりつつある

スーパーで販売されているシシャモの干物をじっくり観察してみると、原材料欄に “カラフトシシャモ”と書かれている。
もうご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、僕のような一般庶民が食べているシシャモは、本物のシシャモではなく、カペリン(通称:カラフトシシャモ)という魚なのだ。

カペリンは北海道産シシャモの需要が高まった1970年代以降、カナダやノルウェーなどから輸入されるようになった、シシャモと同じくキュウリウオ科の魚だ。
北海道産のシシャモの激減と相まって、いつしかシシャモと言えばカペリンというイメージが我々日本人にはついてしまっているが、カペリンとシシャモは全く別の魚なのだ。

今まで、シシャモには国産と輸入品があるという事は何となく知っていたが、いざ国産を探してみようと思うと、スーパーはおろか鮮魚専門店ですら売っていない。

僕は本物のシシャモを知らないのか?!

カペリンって名前は馴染めないケド、安くて美味しいし、北欧や北米は資源管理が進んでいるから、わざわざ資源量が減っている日本のシシャモを食べなくたって良いじゃんね。そう思って納得しようとしたのだが…。

冷静になると、もはや干物ですら本物のシシャモを僕は今まで見たことが無いのかもしれない…。という事実を突きつけられた。

『怪魚ハンターがトキメク瞬間』

本物のシシャモについて調べを進めていくと、どうも北海道の太平洋側で狙って釣ることができるらしい。
いつ・どこで・どうやって釣っているか、インターネットという最新かつ無料の釣り具を駆使して情報を集め、北海道へと向かった。

地元の釣具店で生の情報収集

飛行機を降り、レンタカーでまず向かったのは釣具店だ。
早速、シシャモの釣果情報を店員に尋ねてみると、『一昨日は釣れましたよ!』と明るい答えが返ってきた。

詳しく聞くと、なんでも朝から夕方までやって1匹釣れたらしい。夜通しやったお客さんは2匹釣ったとか…。思った以上に釣れない魚ということが判明し、気が引き締まる。

数百キロ走り、シシャモ釣り師を探す

北海道の釣りは、SNSなどに釣果情報がなかなか出てこない反面、釣れている場所には人だかりが発生するイメージがある。

海岸線をひた走り、漁港という漁港を見て回った。結果、『シシャモは先週までだった』という漁港が1つあったが、ここ数日は全くダメとのこと。まさか、朝から丸一日、釣り場を探す羽目になるとは思っていなかった。

シシャモ釣りのチャンスとされる日没前後は、ダメ元で竿を出そうと思い、釣り具屋で一昨日2匹釣れたという実績場へ戻ることにした。

ニシンが入食いだ

一昨日少ないながらもシシャモが釣れたという情報は本当のようで、シシャモ狙いの釣り人が岸壁沿いにズラッと並んでいる。
隣に入って良いですか?と尋ねながら、シシャモの釣果を聞いてみると朝からやってゼロらしい。


試しに、コマセをパラパラと撒いてみると、小さなニシンが掛かってきた。
僕にとってお初な魚種だったので、心底喜びながら写真を沢山撮った。

シシャモはアオイソメで釣る

シシャモの釣り方は、シシャモ用のサビキ仕掛けにアオイソメを付け、誘いを掛けながら釣るらしい。
釣り具店や隣の釣り人に教わった通りの釣り方を1時間ほど続けていると、釣り竿の穂先にビビビッっと生命反応が来た!
慎重にリールを巻き上げ、釣り上がった小魚を水を張ったケースに直行させる。

やっと出会えた本物のシシャモ

今、自分が釣り上げた魚がシシャモなのか、キュウリウオなのか、チカなのか。
半信半疑で仕方ないのだが、口を触ると歯が感じられるのでチカの線は無さそうだ。
キュウリウオすら釣ったことがない僕では、この類の魚の区別に自信が持てないでいると、隣の釣り人がニコニコ笑いながら『ニオイを嗅いでみな!』とアドバイスをくれた。

鼻を近づけてみても、胡瓜の臭いはしない。
『それ、シシャモだよ!』っと、地元の方からシシャモ認定をいただいたところで大撮影大会開始だ。
1匹のシシャモを相手に、100枚以上も写真を撮っている間に短いシシャモの時合は終わっていた

次のステージへ

初めてのイッピキを求めた僕の釣り旅は、1魚種1匹でクリアになる。
今回の北海道遠征、シシャモを相手に48時間を計上していたが、なんとか到着日に釣ることができた。

余った時間は、次なる目標へのマージンや別の魚を探す時間として有効活用されるのだが、次回の記事では、真っ赤なウサギアイナメを釣り狙った釣行記をお届けしたい。

気になる本シシャモのお味は?

(上から順に、チカ・キュウリウオ・シシャモ)

北海道では、釣れたシシャモをその場で干す方が多いようで、僕もそう勧められたが、最初の1匹、そして唯一の1匹のシシャモは干さずに塩焼きで頂きたいところだ。

シシャモが早く釣れてくれたお陰で、狙いに行けたサブターゲットであるチカとキュウリウオと合わせて自宅に発送し、帰宅後3種を塩焼きで食べ比べてみた。

(上から順に、チカ・キュウリウオ・シシャモ)

焼いている時から3種の違いは歴然で、シシャモだけ脂がジュワジュワと音を立てている。
プチプチとした魚卵の触感と香り高い風味と旨味豊かな身質。

写真撮影を後回しにして、もう少し釣っておけば良かったかなと、僅かながら後悔させられる最高級の美味であった。